ラテックスアレルギーになりやすい
リスク(ハイリスクグループ)とは?
2014年に日本ラテックスアレルギー研究会会員を対象にラテックスアレルギーの発生状況を調査したところ、1999年に比べて20歳代の発症が減少し10歳未満の発症率が高くなっていた。リスクファクターの検討では、看護師の割合が減少し、アトピー体質を有する者と医療処置を繰り返す者の割合が増加していた。また、ラテックス-フルーツ症候群の罹患率が15%から40%に増加していることがわかった1)。
1.ハイリスクグループ
ラテックスアレルギーを起こしやすいグループは、アレルゲンとの接触とアレルギーを起こしやすい素因を持つかどうかによって決まってくると考えられる。したがって、天然ゴムを含む製品に接触する機会が多い人は、ラテックスアレルギーを起こすリスクがそれだけ高くなる。ハイリスクグループを職業、素因の有無、危険度という観点で分類すると次のようになり、グループに応じた予防対策が必要である。
1)医療従事者
天然ゴム製の手袋や、その他の天然ゴム製品を頻繁に使用する医療従事者(医師や看護師、歯科医師、歯科衛生士、手術室のスタッフ、実験室のテクニシャン、施設の清掃員など)、医学部や歯学部、看護学部などの医療関係の学生などはハイリスクグループに相当する。近年、ラテックスフリー、パウダーフリーの手袋が医療現場に導入されてきたことにより、ラテックスアレルギーの発症率が低下してきており、このことが看護師をはじめとする医療従事者の発症頻度の低下に関係していると考えられている2)。
2)アトピー素因を持つ人
アトピー素因(数多くの対象物に対してアレルギー反応を起こす傾向がある素因)を持つ人はラテックスアレルギーに罹患するリスクが高く、今回の調査ではアトピー性皮膚炎の割合が増加していた1)。また、ラテックスアレルギーはバナナ、キウイフルーツ、アボカド、クリなどに対するアレルギーと関連性があり、罹患率が増加してきていることから、このような食物アレルギーを有する人は注意が必要である3)。
3)医療処置を繰り返し受ける人
欧米では、1980年代から二分脊椎症を有する患者の多くがラテックスアレルゲンに感作されて、アナフィラキシーショックを起こしたことが報告されている。このように、先天的な機能障害があるために繰り返し医療処置(手袋やカテーテルなどのラテックス製品が反復して用いられる)を必要とする人や、後天的な理由でも医療処置を長期にわたって継続しなければならない患者、繰り返し手術を受けている患者は、ラテックスアレルギーに罹患するリスクが非常に高くなる。
4)天然ゴム製手袋の使用頻度が高い人
医療以外の分野でも、天然ゴム製手袋の使用頻度が高い職業である食品関係業、清掃業、製造業などの従事者は注意が必要である。最近では医療用ゴム手袋については種々の対策がなされるようになったが、医療用以外のゴム製品に関しては対策がほとんどなされていない。
2.危険度からの分類
誘発され得るアレルギー反応の危険性から分類したハイリスクグループを表4-1に示す。
- 参考文献
- 1) 近藤康人, 川井 学, 矢上晶子, 他. ラテックスアレルギーの発生状況2015. 日本ラテックスアレルギー研究会会誌. 2015;19:41-3.
- 2) Korniewicz DM, Chookaew N, Brown J, et al. Impact of converting to powder-free gloves. Decreasing the symptoms of Latex exposure in operating room personnel. AAOHN J. 2005;53:111-6.
- 3) Wagner S, Breiteneder H. The latex-fruit syndrome. Biochem Soc Trans. 2002;30:935-40.