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どのようにラテックスアレルギーに
なってしまうの?

[要旨]要旨
1.ラテックスアレルゲン
2.感作経路

1.ラテックスアレルゲン

ラテックスには、いわゆるゴムの木を原料とする天然ゴムラテックスと石油を原料とする合成ゴムラテックスがある。本ガイドラインおよび多くの医療分野において、ラテックスとは天然ゴムラテックスを指す。ラテックスアレルギーとは、天然ゴムラテックスによるアレルギー反応を指す。天然ゴムラテックスは、主にパラゴムの木(Hevea brasiliensis)から乳状の液体として得られる。この天然ゴムラテックスに含まれる1.5%程度のタンパク質成分がラテックスアレルギーの原因(アレルゲン)となる。このタンパク質の一部は、最終的な天然ゴム製品にまで残存してゴム手袋などの使用中に汗などにより溶出することで、アレルゲンとして作用し感作が成立する。現在までにラテックス中に含まれる15種類のコンポーネント(Hev b 1~15)が、正式に命名・登録されている(表3-1)。アレルゲンに感作された50%以上の患者が感作されているコンポーネントを主要アレルゲン(major allergen)といい、ラテックスではHev b 1、Hev b 3、Hev b 5、Hev b 6がそれにあたる。

天然ゴム製品には、手袋やカテーテルなどのように、遠心・濃縮した天然ゴムラテックスに型を浸すことにより形成・加工される製品(ディップドプロダクト)と、輪ゴムやタイヤなどのように、固形成分であるドライラバーから製成される製品がある。最終的な製品から溶出するアレルゲンの量は、ディップドプロダクトからのほうが圧倒的に多い。石油を原料とする合成ゴムラテックス製品では、即時型アレルギー反応の原因となるタンパクアレルゲンが溶出することはない。

ラテックスアレルギーは、IgE抗体が関与する即時型アレルギー反応であり、このIgE抗体とラテックスアレルゲンが反応することで引き起こされる。したがって、天然ゴムを含むあらゆる製品が原因となり得るが、医療従事者においては、手袋が最大の原因である。また、医療用具を繰り返し使用する二分脊椎症などの患者においては、手袋以外にも、尿道カテーテルなど粘膜と頻回に触れる医療用具が主要な原因となる。

表3 - 1 WHO-IUISによって正式登録されているラテックスアレルゲンコンポーネント2, 3)
表3 - 1 WHO-IUISによって正式登録されているラテックスアレルゲンコンポーネント2, 3)

2.感作経路

主要アレルゲンのうちHev b 1とHeb b 3は最もエアゾル化しにくいコンポーネントで、ゴム製品が直接粘膜に接触することで感作が生じると考えられており、二分脊椎症患者での主要アレルゲンとして知られている。一方、ラテックスアレルゲンへの曝露経路は、天然ゴム製品との直接的な接触に限定されない。例えば、パウダー付き天然ゴム製手袋では、滑りをよくする目的で塗布されたコーンスターチパウダーには、可溶性コンポーネントであるHevb 5とHev b 6をはじめとして多量のラテックスアレルゲンが吸着している。これらが空中に飛散し、吸入することによってもラテックスアレルゲンに曝露される。このパウダーがラテックスアレルゲンに対する感作の成立を促進するアジュバントとして作用する可能性も指摘されている1)。また、手指に湿疹のある患者が天然ゴム製の手袋を着用した場合は、皮膚を通してのラテックスアレルゲンの曝露量が多くなり、ラテックスアレルギーに罹患する危険性が高くなる。また、単なる手荒れの状態でラテックスアレルゲンに曝露し続けると、より重篤な反応が誘発されるようになると考えられている。

アレルギー反応を引き起こす天然ゴム以外の物質に関する研究から、ある集団においてアレルゲンに対する全体的な曝露量が多くなるほど、より多くの人が感作されることが明らかにされている。感作を成立させるのに必要とされるラテックスアレルゲンへの曝露量や、アレルギー反応の誘発に必要とされるタンパク質アレルゲンの量は、いまのところ明確にはされていない。しかし、ラテックスアレルゲンへの曝露量が少なくなれば、全体として感作の割合が低くなり、また、誘発される症状の量が軽減することが報告されている4)

参考文献
1) Nettis E, Colanardi MC, Ferrannini A. Type I latex allergy in health care workers with latex-induced contact urticaria syndrome:a follow-up study. Allergy. 2004;59:718-23.
2) Raulf-Heimsoth M, Rihs HP, Rozynek P, et al. Quantitative analysis of immunoglobulin E reactivity profiles in patients allergic or sensitized to natural rubber latex( Hevea brasiliensis). Clin Exp Allergy. 2007;37:1657-67.
3) Palosuo T, Lehto M, Kotovuori A, et al. Latex allergy:low prevalence of immunoglobulin E to highly purified proteins Hev b 2 and Hev b 13. Clin Exp Allergy. 2007;37:1502-11.
4) Edlich RF, Woodard CR, Pine SA, et al. Hazards of powder on surgical and examination gloves:a collective review. J Long Term Eff Med Implants. 2001;11:15-27.